製品技術

クロックへのこだわり
S/PDIF入力と内蔵オーディオ専用クロック

デジタル音源の再生において、ジッター問題(クロック信号の揺らぎ)は常に課題となっています。スタンダードなジッター対策として、サンプルレートコンバーターによるリクロック/リサンプリングがあります。この方法を採用した場合、サンプルレートを再度演算することにより音質が変化するため、マスター音源に対して忠実な再現方法とは言えません。これはPCオーディオ再生時にカーネルミキサーを通過することによる音質の変化と同様であると言えます。弊社は、これまでのUSBオーディオ製品の開発によって積み上げたクロックに関わるデジタルデータ処理のノウハウを応用し、この問題に着手し、デジタルデータを変化させることなくジッターレスで再生することを可能にしました。

一般的なS/PDIF入力は、重畳されたデジタルオーディオ信号(Bit clock, L/R clock, Master clock)からMaster clockを分離し、クロック信号をリカバリ(復調)します。この方式を採用する製品は、DIR(Digital Interface Receaver)と呼ばれるICを用いて制御されます。DIRを使用した場合、機器間に接続したケーブルが受ける外来ノイズや、データ転送時に起こるタイミングのズレによる影響を受けることになります。受け取ったAudio StreamからMasterClockを分離してクロックを復調されるため、転送時に受けた影響(ジッター)がそのままPLL回路でリカバリされることになります。この問題を解決するには、サンプルレートコンバーターによるリクロック/リサンプリング処理が一般的ですが、前記した通りデータを再度演算することで音質が変化してしまうため、問題を解決したことにはなりません。<図1>

図1:一般的なS/PDIF入力

弊社の採用するS/PDIF入力処理<図2>は、Audio Streamに重畳されたクロックを使用せず、内部2基の水晶発振器によってマスタークロックが生成されます。入力されたサンプルレートに応じ44.1kHz系、48kHz系のいずれかをセレクト、忠実なマスタークロックを生成し、DACに転送されます。独自に開発されたファームウェアで実現されたこの方式を採用することで、転送時の接続環境とPLL回路に起因するジッター問題を同時に根本から解決し、低シッター再生を可能にしています。

図2:独自開発のS/PDIF入力